加藤謙一税理士事務所 > 記事一覧 > 不動産相続にかかる相続税と相続登記
不動産相続のおおまかな流れ
相続するにあたって不動産の遺産は少し特殊です。現金や株券のように明確に分けることが可能な遺産であれば配分を自由に決められますが、不動産となるとなかなかそうはいきません。不動産を相続するにしても、ケーキやパンのように一部を切り分けて自身の相続分、とすることは現実的ではありません。ここでは不動産を相続するまでの流れを見ていきましょう。
まず、不動産を相続するにあたって一番大切なのは何といっても持っている不動産がいくらになるかです。不動産の価値は通常土地と建物に分けて計算します。大まかな計算は国税庁が発表している路線価図で1㎡あたりの金額を確認し、相続対象の土地の大きさが解れば大体の土地の価値が確認できるでしょう。
次に建物の価値を調べます。建物の評価はすでに建築されているものと現在建築中のものとで計算方法が異なります。すでに建築されているものに関しては建物のある自治体の役所へ行き、固定資産税台帳から固定資産税を確認しましょう。もしくは郵送されてくる
課税明細書でも確認が可能になります。建物がまだ完成していない場合は、建設費用×0.7で評価額を出すことが出来ます。建物+土地の合算で自分の持っている不動産の金額がどれくらいなのか大体想定できます。
不動産の大体の価値が把握できたら次は相続方法の種類について考えていきましょう。
動産を分ける方法は4つの方法があり、以下のようになります。
1 現物分割
相続人同士、敷地の広さで分割する方法。ただし、相続した建物を壊して新しく建物を建てる場合、敷地面積が条例に引っかかって建設することが出来ないこともあるので、事前に建物のある自治体の条例を確認しておいた方がいい。
2 代償分割
ひとりの相続人が不動産を相続し、その代わりとして不動産以外の遺産相続(貯蓄や株券など)を他の相続人に渡すこと。しかしながら、被相続人が不動産以外の資産を持っていない場合は、相続争いに発展するときがあるので注意が必要。
3 共有
不動産を相続人同士で共有すること。共同名義で管理すること。ただし相続人が死亡すると本来相続人でなかった立場の人も新たに相続権をえることになり、複雑化するので注意が必要。
4 換価分割
被相続人の所有している不動産を売却し、そのお金を相続人に分配すること。一番わかりやすい方法であるが、単独名義で売却した場合、贈与税かかったり立場によって同じ金額でもかかる税金の額がかかる可能性があるので注意が必要。
それぞれどの分割方法もメリットとデメリットが存在します。相続人がひとりである場合は問題ありませんが、相続人が複数になると公平にしようとしても不公平になるときがあります。
また、不動産を相続すると毎年固定資産税がかかります。住居や会社のオフィスとして活用する場合は問題ありませんが、とくに利用しないときは売却した方がのちのち長い目で見たときに、税金がかからないことがあるので自身の事情と照らし合わせ一番損の無い選択をしましょう。
相続登記とは端的にいうと不動産の名義変更をさします。不動産を相続した場合、相続登記をすみやかにおこなうことをおすすめします。実際、相続登記は取りよせる書類が多く、また期間も決まっていません。さらにいえば特に法律で定められていないため、手続きをしない方も少なからずいらっしゃるようです。しかしながら手続きを怠ったっているとのちのちにかなり面倒な事態を引き起こす原因になるのです。では、具体的にどのようなことをおこない、またやらない場合、どんなトラブルに発展するのかおはなしさせていただきます。
まず、遺言・遺産分割協議・法定相続、それぞれの方法で不動産の相続が決まったとします。相続登記に必要な書類は以下のようになります。法務局のホームページなどから登記事項証明書を入手し、内容に沿って記入します。それから本籍の記載がある被相続人の住民票の除票をおこないます。ここまでなら、比較的簡単な手続きになるのですが、ここからが大変な作業になります。
1, 対象不動産の登記事項証明書
2, 本籍が記載された被相続人の住民票の除票
3, 被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本
4, 相続人全員の現在の戸籍謄本
5, 対象不動産を取得する相続人の住民票
6, 対象不動産の固定資産評価証明書
7, 相続人全員の印鑑証明書
8, 遺産分割協議書
8種類の書類を提出しなければなりませんが、ここで特に収拾が大変なものは3の被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本と7の相続人全員の印鑑証明書になります。戸籍謄本を収拾するには、戸籍が作り替えられるタイミングを考えると収拾しやすくなります。おもに戸籍が変わるタイミングは結婚・家督の相続・養子縁組・転籍と改製になります。改製とは法の改正によって旧来の様式から新しい様式の戸籍に書き換えることをいいます。転籍が多い人・結婚や離婚を複数回経験した人・また昭和・平成と改製をまたいで生きてきた方は、必然的に作り替えが多くなります。特に転籍は、場所があちこちになってしまうことでなかなか収集できない場合もあるでしょう。
一方の7の相続人の印鑑証明書はどうでしょうか。一見、相続人全員の印鑑証明書は戸籍謄本をたどるよりも簡単に集められそうな気がします。しかし、相続人の数によってはかなり難航する作業となるでしょう。それこそが相続登記を怠慢して発生するトラブルなのです。言葉で説明してもなかなか理解しにくいことですので具体例をだして説明させていただきたいと思います。
例1 …被相続人A名義の不動産があり配偶者が相続する場合。配偶者・子ども3人を合わせて5人家族。被相続人の父母・兄弟姉妹はすでに他界している。
法定相続人の数は4人なので、配偶者が不動産を相続したとき、印鑑証明書を貰うのは自身の子供なので、比較的集めやすいでしょう。
例2 …被相続人Aの父方の祖父名義の不動産の場合。Aの家族構成は配偶者、子ども2人で4人家族。被相続人の父母はすでに他界している。Aは兄・姉がおりこちらも他界しているが、配偶者と子どもがそれぞれ2人ずついる。
この場合、Aの祖父名義の不動産なので、本来であればAの父が相続する。しかし既に他界しているので、AとAの兄・姉に相続権がある。だがAもその兄姉も他界しているので、その子どもと配偶者に相続権が移る。つまり、相続権を持つ人数は9人となり、また直接の親子関係のように血縁が近くないので印鑑証明書を集めるのは難しくなる。
このように、相続登記をおこたっていると相続人の対象が増えてしまい、かつ血縁関係が遠くなってしまうため、相続争いに発展してしまうことが多々あります。また、相続登記に期限はありませんが、相続登記に必要な書類には保管期限があるので、血縁関係が証明できずそもそも相続登記ができなくなる可能性があるのです。そうなる前に相続登記の手続きを行うことをおすすめします。
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